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北原帽子の似たものどうし

昨日書いた文章、今日の目で読み返す。にがい発見を明日の糧に。

【づく/ずく】編集の現場から

ゲラを読んでいると、前回の【づくし/ずくめ】と同様に【づく/ずく】でも「づ」と「ず」で表記が混乱しているのを見かける。漢字で「付く」なら「づく」、「尽く」なら「ずく」になる。なかでも「入院している人を力づける」のように励ますという意味の「力づく」と、強引に行うという意味の「力ずく」は要注意です。後者は「力ずくで」のように、「で」が後ろにつくかたちで出てくる場合がほとんど。見分けるときのヒントになる。下記に頻出する語をならべておきます。参考に。

 

*〜づく(漢字で書くなら「付く」)

・色気づく(×色気ずく)

・力づく(×力ずく)

 

*〜ずく(漢字で書くなら「尽く」)

・力ずく(×力づく)

・腕ずく(×腕づく)

・納得ずく(×納得づく)

・計算ずく(×計算づく)

 

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【づくし/ずくめ】編集の現場から

【づくし/ずくめ】の使い分けのまえに、「ずくし」「づくめ」という書き方はないことを、まず知っておくこと。「づくし」「ずくめ」が正しく、辞書ではこの表記で載っている。

 

それでは本題の使い分け。わたしは今でも迷うときがある。うろ覚えでやると間違う。だから、かならず手許にある辞書で確認するようにしている。それは心から納得していないからかもしれない。とはいえ、辞書ごとに使い分けの記載がまちまちということはない。迷ったらためらわずに確かめよう。

 

ポイントは、最初に指摘したように、漢字で「尽くめ」と書くからといって、読みが「づくめ」にはならないということ(「ずくめ」になります)。もうこれは「そういうもの」として慣れていくしかない。下記に使用例をしめす。

 

*づくし(同じようなものをすべて並べ挙げるという意味でつかう)

使用例

・花尽くし(づくし)

・ないない尽くし(づくし)

 

*ずくめ(すべてがそうであるという意味でつかう)

使用例

・黒尽くめ(ずくめ)

・いいこと尽くめ(ずくめ)

 

これに関連して、使用頻度の高いほかの「づ」「ず」そして「ぢ」「じ」(ひっくるめて「四つ仮名」という)をふくむ言葉も覚えておいて損はない。

 

使用例

・「愛想尽かし」は、あいそづかし(×あいそずかし)

・「稲妻」は、いなずま(×いなづま)

・こぢんまり(×こじんまり)

・「地頭」は、じあたま(×ぢあたま)

 

 

*2017年3月30日 加筆修正しました

  

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【薦める/勧める】編集の現場から

「すすめる」は、「薦める」と「勧める」で迷うときがある。「薦める」のほうがなじみがあるかもしれない。オススメ商品の意味で、よく見かける。もう一方の「勧める」はどうだろう。ときどき見かけるかんじかな。普段から「勧める」を使えるひとは言葉に意識的な印象がある。


使い分けは、比較的わかりやすいと思う。対象が「ヒト、モノ」なのか「コト(行為や方法)」なのかで決められるからだ。以下の例のようになる。

 

 「すすめる」の使い分け例

・読む本をすすめる場合、「薦める」をつかう

・本を読むことをすすめる場合、「勧める」をつかう

 

悩む場合、熟語で区別するとよいかも。たとえば、推薦と勧誘。推薦イメージなら薦める、勧誘イメージなら勧める。参考までに。

 

 

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【悲壮/悲愴】編集の現場から

「ひそう」は、つながる言葉が例えば「あふれる」のか「ただよう」のかで、あてる漢字が変わってくる。あふれるなら「悲壮」、ただようだと「悲愴」になる。

 

悲壮感あふれる表情(勇ましいの意味)

悲愴感ただよう表情(痛ましいの意味)

 

のようになる。ゲラでは圧倒的に「壮」を「愴」に指摘する機会が多い。みんな「悲愴」の場面でも「悲壮」にしてしまうのだ。一般的にPCでは「ひそう」と打つと、まず「悲壮」と表示されるのか。また、「悲」という字が入っているだけで「悲壮」で良しとしてしまうのかも。というわけで、「悲愴」のほうは世間でなじみ薄な存在と認識しておくとよいだろう。

 

 

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【渡る/亘る】編集の現場から

〜は長期に渡る

〜は広範囲に渡る

〜は多岐に渡る

公私に渡り〜

細部に渡り〜

 

上のような使い方は、テレビの画面などではよく見かける。しかし使い分けるのなら、これらはすべて正確には「亘る」のほう。「亘る」をつかうところで「渡る」になっているのが常態化している背景には、「亘る」が常用漢字でないことが影響しているもよう。使い分けたい人は以下のイメージをヒントにしてみてください。とくに意味をもたせる場合でなければ、どちらもひらがなで対応するとよいです。

 

渡る:ある地点からある地点へ移動するイメージ

亘る:すみずみまで広がるイメージ

 

 

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【伺う/窺う】編集の現場から

・伺う

聞く、尋ねる、訪ねるの謙譲語

・窺う

様子をみたり、機会をねらったりすること

 

ゲラでの指摘では「伺う」を「窺う」に直すときが多い印象。たとえば「顔色を伺う」としているのをよく見かける。おそらく一般的に「窺う」の存在感がうすいんだろう。機嫌の場合は「伺う」だけど(ご機嫌伺い)、顔色は「窺う」のほうになる。間違いやすいので注意したい。文章の読みやすさを優先して、どちらのケースでもひらがなで「うかがう」としている著者の方も少なくない。

 

 

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【半面/反面】編集の現場から

よくあるのが、「半面」をつかったほうがよいところで「反面」にしている例。とくに接続詞的につかう場面では気を配りたい。著者の方でも、きちんと使い分けているときが少ない印象がある。そんな似たものどうし。

 

・「片方で」「一方で」の意味でつかう場合

「〜である。半面、〜でもある」

例文 このような使い分けはどうでもよいと思う。半面、考えると確かに区別できるような気もする。(反面でなく、半面をつかったほうがよい文章)

 

・プラス面とマイナス面で対比する場合

「〜である反面、〜である」

例文 便利である反面、リスクもある。

 

*新聞界では、「反面」をつかう場面でも「半面」で統一しているところがある。

 

 

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