北原帽子の似たものどうし

昨日書いた文章、今日の目で読み返す。にがい発見を明日の糧に。

【迎える/向かえる】編集の現場から

基本的な意味 迎える:人や物事がやってくるのをこちらが待ち受ける 向かえる:相手がいる方向や物事のある方向へ進められる 現状 変換時に起こるうっかりミス。一般的に「迎える」の使用頻度が高いので、多くは「迎えて」と打つときに「向かえて」としてし…

【即する/則する】編集の現場から

基本的な意味 ・即する:ぴたりとつく、あてはまる ・則する:ある基準や決まりに従う 現状 「即する」と「則する」は似た意味を持つ言葉ですが、微妙に意味合いが異なります。「即する」は、「ぴったり合う」というニュアンスに近く、状況や条件に適応する…

【逸らす/反らす】編集の現場から

基本的な意味 逸らす:別の方向へ向ける 反らす:弓なりに曲げる 現状 「逸れる」は、目的語をともなう「逸らす」のときにうっかりミスが起こりやすい。そして、それは身体の部位に関連する表現のときだ。また、「逸らす」がふさわしい入力の場面、変換候補…

7年たって「おわりに」を公開します

2015年3月に電子書籍『文章の手直しメソッド 〜自分にいつ何をさせるのか〜』をセルフパブリッシングとして出して、7年がたちました。これを機に本書の最後に添えた文章「おわりに」をブログ公開します。自分の編集実務を振り返ってメモにしているとき、ふと…

「喩える」にも光をあてて…という話

世間に「例える」という表記が普通に使われるようになった経緯を少しさぐってみる。 というのも書籍の編集実務という仕事柄、「たとえる」という語の表記はずっと気にしてきた。何度ゲラに指摘してきたことだろう。普通の暮らしのなかでは「例える」が通常運…

アウトロダクション 〜推敲の終えどきをさぐる〜

イントロダクション、そして4回に分けて考えてきた推敲の終えどきに関する分類を振り返ります。 進捗について iPhoneのデフォルトアプリ「テキストエディット」に、新規で「推敲の終えどきをさぐる」と入力したと思う。昨年の11月のことだ。ある話題に対…

完成なのか終了なのか 〜推敲の終えどきをさぐる〜

それでは4つのケースのうちの4つめ、最後になります。文章についてプロセスが言えることがいくつかあります。 ケース4. 時間的な制約がある場合で、なおかつ文章を削れない 文章を削れないにも以下の二通りがあります。 ・削り終えて、もう削れないのか ・…

デッドライン 〜推敲の終えどきをさぐる〜

それでは、4つのケースのうちの3つめです。文章についてプロセスが言えることは、いくつかあります。 ケース3. 時間的な制約がある場合で、文章を削れる もの作りにおいては完成させることが大切です。修正しやすいデジタル環境にくらべてアナログ環境では…

操作のゆくえ 〜推敲の終えどきをさぐる〜

それでは、4つのケースのうちのふたつめです。プロセスがおしえてくれることが少なからずあります。 ケース2. 時間的な制約がない場合で、文章を削れる どのようなふるまいに自覚的になるとよいのか? 執筆後半の手直し途中、デジタル環境でおこなう操作が…

削れない理由 〜推敲の終えどきをさぐる〜

それでは、4つのケースのうちのひとつめから見ていきます。プロセスがおしえてくれることが少なからずあります。 ケース1. 時間的な制約がない場合で、文章を削れない 削れないにも二通りあります。削り終えてもう削るところがないのか、寝かせが足りなくて…

推敲の終えどきをさぐる(イントロダクション)

観るともなしに映画『イコライザー』を観ていたら、困難と向き合う友人をデンゼル・ワシントンが励ますシーンで「完璧より前進(progress.not perfection.)」というフレーズがでてきました。 今回はこの「完璧より前進」が意味するものを考えてみました。ま…

時間をずらしながら書き上げる方法

自分に最後まで文章を書いてもらうのは容易ではありません。だけど、書き上げるプロセスの工夫で書き上がるかもしれない。たとえば一度に書けなくてもいいし、それがダメなことではないと思わせてくれる方法があってもいいでしょう。今回はそんな時間をずら…

下書きと清書 読書感想文の書き方(その2)

前回、生徒にとってもう少し書きやすい読書感想文の方法はないだろうか、という課題の提示で終わりました。今回、その先をつづけようと思います。 どのようなスタンスで取り組んだらいいのか? 漠然とだけど書きやすい方法を想像してみる。わたしが先生で自…

下書きと清書 読書感想文の書き方(その1)

何年か前に「文章と教育」という記事を書いた。この延長で読書感想文の書き方というものに関心が向いていた。今回はその書き方(今回最後のほうでは「書き上げ方」「やり方」という言い方になりました)のはなしを中心に、自分のなかでわき起こった考えの行…

5年たって考えていること

最寄り駅までの15分ほどの歩きで考えることがわたしをつくる。先月から会社は在宅勤務の日が増えて、通勤は朝の当たり前ではなくなっているけど、歩くことが大切なのは変わらない。手段ではなく目的のときもあるし、手段と目的を兼ねるときもある。自分に…

【聞く/聴く/訊く】編集の現場から

英単語で説明すると使い分けがわかりやすいので、以下に示します。辞書で確認すると、「聞く」の使い方は思ったより多くありますが、ここでは割愛します。 基本的な使い分け 聞く:hear(askを含む) 聴く:listen 訊く:ask 現状 「聴く」や「訊く」のほう…

こうして誤記はひとつだけ残る(2)

前回から引き続き、編集プロセスからみた誤記が残るしくみをさぐります。 例えば、繁盛する飲食店の店員になった自分を想像してみます。営業時間の終わり間際にお客の入店を断るときがあるかもしれない、来てくれたひとに申し訳ないけど。再校の段階というの…

こうして誤記はひとつだけ残る(1)

2、3年前になりますが、ある著名な作家が下記のようなことをつぶやいていました。 私の本、誤字がいつもひとつだけ残るのはどうしてなんだろうか… 編集実務という仕事柄、思い当たることもあり、このつぶやきはわたしの頭の片隅に残った。なぜいつもひとつ…

わからない中で書いてみること

まとまった文章を先がわからない中で書くことがある。頭の中にはイメージやフレーズだけが浮かんでいる。このような状態からでもなんとか形にしていきたい。そんなときはどうするか。今日は、この「わからない中で書く」を受け入れてみる、というはなしをし…

【進入/侵入】編集の現場から

基本的な意味 進入:(単に)ある領域に入る 侵入:(無理に)ある領域に踏み込む 現状 文章を読んでいて、本来「進入」のほうがふさわしいのに「侵入」が使われているのを見かけるときがあります。【進入/侵入】は現れる頻度はそう多くない同音異義語です…

取り組みへのジレンマ

3月に『気づけなかった同音異義語』という本をセルフパブリッシングで出しました。ああすればよかったとか、こうしなければよかったとかがひと通り落ち着き、無風状態がおとずれている。そして、今はある問いがぼんやりと湧き立っている。今日はそのことに…

『気づけなかった同音異義語』編集後記(3)

編集で心がけたこと、本書の活用のしかた、と今回の出版の後記を重ねてきましたが、これが最終。制作プロセスについての振り返りです。(前回はこちら) お店のレジでもらうレシートにはそのときの時刻が印字される。カフェなど注文してから席につくスタイル…

『気づけなかった同音異義語』編集後記(2)

(前回はこちら) ・なぜか、そのときは気づけない書名が長くなるのはあまり好きではないのでやめましたが、「気づけなかった同音異義語」の前に、「わかってても」か「ふつうに」をつけようと思った時期がありました。 これを言ってしまうと元も子もないの…

『気づけなかった同音異義語 Kanji and Typos』編集後記

このたび、ブログ「北原帽子の似たものどうし」の記事をもとに、新しく編集しなおしたものをkindle本として電子書籍化しました。『気づけなかった同音異義語 Kanji and Typos』というタイトルです。 今回、企画段階ではピックアップする項目の数で悩みました…

ブログの記事をもとに、本をつくっています(進行中)

現在、ブログの記事をもとに本を編集しているところです。 わたしが日々ゲラに接しながら向き合ってきたものは何だったんだろうか。 ときどき振り返ったりします。 まちがいなく同音異義語はその中のひとつだと思う。 同音異義語は入力作業の変換で起きるミ…

【効く/利く】編集の現場から

基本的な意味 効く:効果がある 利く:機能する(work)、できる 現状 このふたつは、意味だけみると理解しやすい似たものどうしだと思います。ただ、実際の使われ方は「効く」にバイアスがかかり、「利く」のほうがあまり認知されていない印象。本の編集の…

【以前/依然】編集の現場から

基本的な意味 以前:ある時点より前(時間) 依然:前と変わらない様(状態) ・現状 仕事でゲラを読んでいて、数年前までは「以前として」という書きミスを見かけることがあった(最近はあまり見ない)。そして私はそれをちょくちょく見落としてきた。年に…

【必須/必至】編集の現場から

基本的な意味 必須:なくてはならないこと 必至:必ずそうなること、避けられそうにないこと 現状 必至の意味がふさわしい文脈なのに、必須にする人が少なくない。ベテランの著者はあまり間違わない印象がある。 理由 わたしたちが、なぜ必至をつかうべきと…

【決済/決裁】編集の現場から

基本的な意味 決済:お金を支払う 決裁:下の者が出した案の可否を上の者が決める ・現状と理由 同音異義語による変換ミスの典型ペアです。編集の現場感覚では、「決裁」をつかう場面で「決済」にひっぱられるものが多い印象です。「決裁」のほうが世間的に…

だれが自分の文章を読むのか?

顔つきというものは変えられないが、身だしなみは整えられる。 たとえば、家をでる前の身じたくから人に会うまでの時間をすこし思いかえしてみる。会った人に、襟の折れやボタンのかけ忘れ、チャックの閉め忘れなどを指摘されたことがあっただろうかと。最近…