北原帽子の似たものどうし

昨日書いた文章、今日の目で読み返す。にがい発見を明日の糧に。

『気づけなかった同音異義語』編集後記(2)

(前回はこちら)

・なぜか、そのときは気づけない
書名が長くなるのはあまり好きではないのでやめましたが、「気づけなかった同音異義語」の前に、「わかってても」か「ふつうに」をつけようと思った時期がありました。

これを言ってしまうと元も子もないのですが、本書を一度読んだからといって同音異義語のミスがなくなるというわけではありません。いままで気づけなかったものが、いくつか気づける程度でしょう。「そうなの?」と思う方もいるかもしれませんね。でもほんとうのことです。同音異義語は文章を書いている(入力している)途中で出てくると、とたんに間違いに気づけなくなるもの(わかっていてもやられてしまう)。これは書こうとする内容に頭がいって、書いている行為のほうが少しおろそかになるからだと思います。たとえば外でケータイで誰かと電話中、周囲への注意が散漫になるかんじに似てる。同時に両方ともうまくやろうとしても無理みたいなのだ。では、どうしたらよいのか。書いたものと向き合う時間を別にとる。つまり、何回も自分の文章を読み返すしかないのです。読み返すと、少なくともうっかりミスには気づけるようになります。まかり通りミスに関しては、自分の意思で使わないようにするしかありません。もちろん使いたければ使いつづけてもかまいません。環境(相手)に応じて、スタンス(自分)に応じて、臨機応変に表現覚悟を使い分けていいと思います。

・自分のものにする瞬間まで
この本『気づけなかった同音異義語』を有効に活用するには2回目が肝心です。1回目が初読、2回目は再読と一般的にはいいますが、今回わたしが言いたい2回目はすこしニュアンスが異なります。この本を一度読み終わり、なにかの折、ちょっと気になって再びひらくときが2回目。ここがとても大切な瞬間だと思うのです。なぜなら2回目こそがその語に対するもっとも主体的な行動といえるからです。この経験をさまざまな語でしておくと、流れのなかの文章でもミスに気づきやすくなるように思います。

編集作業で心がけたことは先月記しました。本書には、わたしが「ミスの出方への対応」を最優先したことで、あなたが知りたかった語源にもとづいた理由などは書かれていないかもしれません。そのときはご了承ください。巻末に、今回まとめ作業をするうえで参考にした図書を掲げました。関心がわくものがありましたら、ぜひ手に入れてみることをお勧めします。来月は本書の「制作プロセス」について記す予定です。(次回はこちら)


*4月中は、[twitter:@kitaharaboushi]ハッシュタグ「#気づけなかった同音異義語」)で、本書についてつぶやいています。よかったらのぞいてみてください。

 

 

 

気づけなかった同音異義語: Kanji and Typos