このふたつは同音異義語ではありません。
代価(だいか)と対価(たいか)。
「代価」の意味で、「対価」を使っているひとが多い印象がある。
たとえば「だれがその対価を払うのか」は、「だれがその代価を払うのか」である場合が多い。
・だれがその代価(代償、犠牲の意)を払うのか
これが辞書的には正解。だけど、なぜだかあまり見かけない。
また、それとはちがう意味で「対価を支払う」を使用していることもある。
・労働の対価として給与を支払う
これを、途中の目的語を省略しているような文(以下の文)として見かけることがあるのだ。
・労働の対価(として給与)を支払う
ほかの例では以下のように。
(サブスクリプションという用語の説明で)
・その都度購入するのではなく、体験・サービスなどの期間利用で対価を支払う方式
この場合、見合った金額・相当の金額、という意味を対価に込めたいのだろう。
だけど、これらの表現には違和感がある。以下で説明するように、基本、対価は払うものではなく、受け取るものだからだ。
代価の意味:支払う代金、払う犠牲・代償
対価の意味:受け取る利益・報酬
「代価」ということばの不人気を受けて、「対価」の新しい使い方が常態化しつつあるなかで、どのように対処していけばよいのか。
「代価」を使いたくなければ、代金(ほかにお金・金額・料金などでもよい)、犠牲、代償のほか、担保、保証、補償に置き換えるとよいかもしれない。文脈によっては「見返り」「相当分」がしっくりくるケースもある。
*2017年2月7日 加筆修正しました
*2022年12月10日 加筆修正しました
Amazon.co.jp: 文章の手直しメソッド: 〜自分にいつ何をさせるのか〜 eBook: 北原 帽子: Kindleストア