北原帽子の似たものどうし

昨日書いた文章、今日の目で読み返す。にがい発見を明日の糧に。

【速攻/即行】編集の現場から

●基本的な意味
速攻:相手の態勢がととのう前に、すばやく攻めること
即行:すぐに行うこと


・現状
「即行」をつかうべきところで「速攻」にしている例が目立つ。まかり通っている同音異義語ミスのひとつ。


・理由
書きことばとして、実際「即行」をつかうべきケースは多いのに、スポーツ観戦などの耳からの情報で「速攻」がうかぶのではないか。つまり「即行」の認知度が低いことが挙げられる。「即行」を載せていない辞典が少なからずあるのも影響しているかもしれない。


・対処
「そのとき、すぐにやる」の意ならば、「即行」がふさわしい。「速攻」の使用は、本来はスポーツなどで限定的なもの。


▼例文
即行:「即行でフラグが立ちそうな駄目ゼリフだね」
速攻:相手チームの攻撃をしのいだ後、カウンターから速攻で点を入れた

 

 

 

*2019年1月30日、加筆修正しました

 

気づけなかった同音異義語: Kanji and Typos
 

 

【懸命/賢明】編集の現場から

●基本的な意味
懸命:力のかぎり
賢明:かしこく問題に対処できるようす


・現状
似たような意味ではないので間違えそうもない気がするが、よく目にする。「懸命に〜する」のときはあまり問題ない。気をつけたいのは「〜するのは賢明だ」を「〜するのは懸命だ」と書いて、気がつかないパターン。


・理由
「懸命」の存在感が圧倒的なので、「賢明」のつかいどころでもってこれない。


・対処
「賢明」の存在を意識する。入力時、変換でのうっかりミスに注意です。

 

 

 

*2019年1月29日、加筆修正しました

 

気づけなかった同音異義語: Kanji and Typos
 

 

【上げる/挙げる】編集の現場から

・現状
「上げる」を「挙げる」にしているケースがよくある。ほとんどが手をアゲル場合。うっかりミスのひとつです。


手を上げる(一般的)
手を挙げる(限定的:挙手に類する、自分の意思をあらわすとき)


とおぼえておくとよい。


・理由
易しい漢字だとノーマークになりやすいのか、書き分けの判断がにぶる傾向にある。とくに訓読みの似たものどうしは注意が必要。


・対処
迷うからといってひらがなにすると、誰かに何かを与えるときの「あげる」になるので避けたいところ。下記の例を参考に。


手をアゲル以外でよくあるのが、会社での場面。課題、問題などを「アゲル」とき、どうすればよいのか。微妙なときもあるのですが、こんな感じ。報告として「アゲル」場合は「上げる」で、意見・列挙として「アゲル」場合は「挙げる」。


▼例文
上げる:「それでは問題があれば、早めに上げるように」
挙げる:「それでは一人ずつ、問題を挙げていってくれ」

 

 

 

*2019年1月28日、加筆修正しました

 

気づけなかった同音異義語: Kanji and Typos
 

 

【耳触り/耳障り】編集の現場から

●基本的な意味
耳触り:聞いた感じ、印象
耳障り:聞いて不快に思うようす


・現状
このふたつ、「耳触りのよい音楽」「耳障りな音」のように使い分ける著者が増えている印象があります。


・理由
昭和の書きものでは、この使い分けの事例はあまり見かけたことがない(広辞苑では第六版までは、そもそも「耳触り」で項目を立てていなかった)。どんな理由から浸透していったのだろう、不明です。


・対処
【耳触り】自体には価値判断は含まれていないが、【耳障り】は不快という感情入り。なので、「耳触りな」「耳障りの悪い」という表現はNGとなる。用法に気をつけて、どちらの「ミミザワリ」か判断してつかいましょう。

 

 

 

*2019年1月25日、加筆修正しました

 

気づけなかった同音異義語: Kanji and Typos
 

 

【叶う/適う】編集の現場から

●基本的な意味
叶う:望んだことが実現する
適う:あてはまる


・現状
「適う」とすべきところ、「叶う」がつかわれていることがよくある。


・理由
つかわれる機会は多いのに、「適う」の存在感がうすい。字画が少ない「叶う」にひっぱられてしまうのかもしれない。


・対処
「〜にかなう」とくれば、それは「叶う」ではなく、「適う」ではないかと疑うべき。


理にかなう
目的にかなう
お心にかなう
御眼鏡にかなう


すべて「適う」が正解です。

 

 

 

*2019年1月24日、加筆修正しました

 

気づけなかった同音異義語: Kanji and Typos
 

 

【撥ね返す/跳ね返る】編集の現場から

●基本的な意味
跳ね返る:反動で、元のところにもどってくる
撥ね返す:押しもどす。つきかえす


・現状
「〜を跳ね返す」という使い方を普通に見かける。微妙なケースもあり、うまく使い分けている人が少ない印象。


・理由
PCで「はねかえす」と入力して、「撥ね返す」が変換候補に挙がることが少ないからか。


・対処
「〜が」とくれば、跳ね返る。「〜を」とくれば、撥ね返す。自動詞と他動詞の違い。わたしも、この仕事に就いてから初めて知りました。【うまれる/うむ】とともに、覚えておきたい使い分けです。

 

 

 

*2019年1月23日、加筆修正しました

 

気づけなかった同音異義語: Kanji and Typos
 

 

【望む/臨む】編集の現場から

・現状
これから起こる、これから始まるというイメージでこの2つは共通するところがある。世間的に「臨む」の存在感がうすい印象がある。編集の現場では、「望む」を「臨む」に直す場面が多い。


・理由
「望む」の意味に意志がふくまれているからか、「臨む」が流されてしまう。例えば「会見を望む」ということはあっても、「会見に望む」とはいわない。「会見に臨む」である。


・対処
「〜をのぞむ」なら「望む」、「〜にのぞむ」なら「臨む」と使い分けることができる。迷うのは水辺のときだけ。以下を参考に。


望む:遠くに見える
臨む:向いている、面している


海を望む城(海と城の距離が遠い)。海に臨む城(海と城は近い)。両方ともあり得る表現だから、わからなくなるのは当然でしょう。

 

 

 

*2019年1月22日、加筆修正しました

 

気づけなかった同音異義語: Kanji and Typos