北原帽子の似たものどうし

昨日書いた文章、今日の目で読み返す。にがい発見を明日の糧に。

似たものどうし

【迎える/向かえる】編集の現場から

基本的な意味 迎える:人や物事がやってくるのをこちらが待ち受ける 向かえる:相手がいる方向や物事のある方向へ進められる 現状 変換時に起こるうっかりミス。一般的に「迎える」の使用頻度が高いので、多くは「迎えて」と打つときに「向かえて」としてし…

【即する/則する】編集の現場から

基本的な意味 ・即する:ぴたりとつく、あてはまる ・則する:ある基準や決まりに従う 現状 「即する」と「則する」は似た意味を持つ言葉ですが、微妙に意味合いが異なります。「即する」は、「ぴったり合う」というニュアンスに近く、状況や条件に適応する…

【逸らす/反らす】編集の現場から

基本的な意味 逸らす:別の方向へ向ける 反らす:弓なりに曲げる 現状 「逸れる」は、目的語をともなう「逸らす」のときにうっかりミスが起こりやすい。そして、それは身体の部位に関連する表現のときだ。また、「逸らす」がふさわしい入力の場面、変換候補…

【聞く/聴く/訊く】編集の現場から

英単語で説明すると使い分けがわかりやすいので、以下に示します。辞書で確認すると、「聞く」の使い方は思ったより多くありますが、ここでは割愛します。 基本的な使い分け 聞く:hear(askを含む) 聴く:listen 訊く:ask 現状 「聴く」や「訊く」のほう…

【進入/侵入】編集の現場から

基本的な意味 進入:(単に)ある領域に入る 侵入:(無理に)ある領域に踏み込む 現状 文章を読んでいて、本来「進入」のほうがふさわしいのに「侵入」が使われているのを見かけるときがあります。【進入/侵入】は現れる頻度はそう多くない同音異義語です…

【効く/利く】編集の現場から

基本的な意味 効く:効果がある 利く:機能する(work)、できる 現状 このふたつは、意味だけみると理解しやすい似たものどうしだと思います。ただ、実際の使われ方は「効く」にバイアスがかかり、「利く」のほうがあまり認知されていない印象。本の編集の…

【以前/依然】編集の現場から

基本的な意味 以前:ある時点より前(時間) 依然:前と変わらない様(状態) ・現状 仕事でゲラを読んでいて、数年前までは「以前として」という書きミスを見かけることがあった(最近はあまり見ない)。そして私はそれをちょくちょく見落としてきた。年に…

【必須/必至】編集の現場から

基本的な意味 必須:なくてはならないこと 必至:必ずそうなること、避けられそうにないこと 現状 必至の意味がふさわしい文脈なのに、必須にする人が少なくない。ベテランの著者はあまり間違わない印象がある。 理由 わたしたちが、なぜ必至をつかうべきと…

【決済/決裁】編集の現場から

基本的な意味 決済:お金を支払う 決裁:下の者が出した案の可否を上の者が決める ・現状と理由 同音異義語による変換ミスの典型ペアです。編集の現場感覚では、「決裁」をつかう場面で「決済」にひっぱられるものが多い印象です。「決裁」のほうが世間的に…

【押さえる/抑える】編集の現場から

基本的な意味 押さえる:動かないようにする 抑える:くいとめる ・現状と理由 この異字同訓は意味の重なる範囲が広いため、使い分けがむずかしい。ゲラでは「押さえる」にすべきところが「抑える」になっているケースが目立つ。また、反対の意味になる場合…

【対価/代価】編集の現場から

このふたつは同音異義語ではありません。 代価(だいか)と対価(たいか)。 「代価」の意味で、「対価」を使っているひとが多い印象がある。 たとえば「だれがその対価を払うのか」は、「だれがその代価を払うのか」である場合が多い。 ・だれがその代価(…

【解答/回答】編集の現場から

前回の使い分け【答える/応える/堪える】で「答える」にふれたので、あわせて考えてみたいのが【解答/回答】の使い分けです。 ・テスト用紙の「かいとう」欄がせまい理由 ・一発「かいとう」 ・アンケート用紙の「かいとう」欄が広すぎる 解答/回答 この…

【答える/応える/堪える】編集の現場から

あなたは「こたえる」という音を聞いたとき、どんな漢字を思い浮かべますか。 答える 応える 堪える さらっと三つともでてくる人は少ないんじゃないかと思います。きちんと使い分けている著者の方も少ない印象があります。それは、どれを使っても間違いでは…

【づく/ずく】編集の現場から

ゲラを読んでいると、前回の【づくし/ずくめ】と同様に【づく/ずく】でも「づ」と「ず」で表記が混乱しているのを見かける。漢字で「付く」なら「づく」、「尽く」なら「ずく」になる。なかでも「入院している人を力づける」のように励ますという意味の「…

【づくし/ずくめ】編集の現場から

【づくし/ずくめ】の使い分けのまえに、「ずくし」「づくめ」という書き方はないことを、まず知っておくこと。「づくし」「ずくめ」が正しく、辞書ではこの表記で載っている。 それでは本題の使い分け。わたしは今でも迷うときがある。うろ覚えでやると間違…

【薦める/勧める】編集の現場から

「すすめる」は、「薦める」と「勧める」で迷うときがある。「薦める」のほうがなじみがあるかもしれない。オススメ商品の意味で、よく見かける。もう一方の「勧める」はどうだろう。ときどき見かけるかんじかな。普段から「勧める」を使えるひとは言葉に意…

【悲壮/悲愴】編集の現場から

「ひそう」は、つながる言葉が例えば「あふれる」のか「ただよう」のかで、あてる漢字が変わってくる。あふれるなら「悲壮」、ただようだと「悲愴」になる。 悲壮感あふれる表情(勇ましいの意味) 悲愴感ただよう表情(痛ましいの意味) のようになる。ゲラ…

【渡る/亘る】編集の現場から

〜は長期に渡る 〜は広範囲に渡る 〜は多岐に渡る 公私に渡り〜 細部に渡り〜 上のような使い方は、テレビの画面などではよく見かける。しかし使い分けるのなら、これらはすべて正確には「亘る」のほう。「亘る」をつかうところで「渡る」になっているのが常…

【伺う/窺う】編集の現場から

・伺う 聞く、尋ねる、訪ねるの謙譲語 ・窺う 様子をみたり、機会をねらったりすること ゲラでの指摘では「伺う」を「窺う」に直すときが多い印象。たとえば「顔色を伺う」としているのをよく見かける。おそらく一般的に「窺う」の存在感がうすいんだろう。…

【半面/反面】編集の現場から

よくあるのが、「半面」をつかったほうがよいところで「反面」にしている例。とくに接続詞的につかう場面では気を配りたい。著者の方でも、きちんと使い分けているときが少ない印象がある。そんな似たものどうし。 ・「片方で」「一方で」の意味でつかう場合…

【お話をする/お話しする】編集の現場から

意外と知られていない、送りがなの有無について。取り上げるのは「おはなし+する」の使い方。どういう場合におはなしの「し」をおくるのか、おくらないのか。表現のしかたは決まっていて、多くの著者も下記のように使っている。参考に。 ・【お話】が名詞の…

【震える/振るえる】編集の現場から

変換ミスの典型。誤りで多いのが、「震える」の意味で「振るえる」としてしまうケース。「振るえる」という文字列が、小刻みに動くこととの親和性を感じさせるのかもしれない。「ふるえる」と打つと推測変換で「震える」が第一候補で必ずくるようにできない…

【うまれる/うむ】編集の現場から

この2つは使い分けが難しい。というか、明確に区別するとうまくいかない場合がある。それでも指針は必要だろうから、示しておきたい。基本、【うまれる/うむ】は、その表現が自動詞なのか他動詞なのかで使い分けるとよい。「〜が生まれる」「〜を産む」と…

【不信/不審】編集の現場から

似たものどうしのなかには、後ろに付く動詞でどちらか決まってくるものがある。【不信/不審】は、その典型。「買う」とあれば前には「不審」、「招く」が後ろにあれば「不信」のほうでなくてはいけない。「不審を買う」「不信を招く」となる。つまり、あや…

【例えば/喩え・譬え/仮令】編集の現場から

この3つのちがいは区別しておきたい。どういうときに、どの漢字をつかうべきか。まず「〜にたとえると」というとき、漢字は「喩え」か「譬え」をつかう。これを「〜に例えると」としているケースが多い。また仮定を強調するさいの「たとえ〜でも」というと…

【身に着ける/身に付ける】編集の現場から

この2つ、使い分けている著者は多い。衣服・アクセサリー類は「身に着ける」で、学問・知識などは「身に付ける」としている。ちなみに、衣服は「着ける」、アクセサリー類は「付ける」で分けているひとはあまりいない。学問・知識を「付ける」にすれば、ア…

【要件/用件】編集の現場から

●基本的な意味要件:必要な条件用件:用事の内容 ・現状「用件」と書くべきところで、「要件」にしているミスが少なくない。うっかりミスの典型。 ・理由「要件」のほうには、たいせつな用事という意味もあるのですが、あまり出番はありません。法律的な用語…

【速攻/即行】編集の現場から

●基本的な意味速攻:相手の態勢がととのう前に、すばやく攻めること即行:すぐに行うこと ・現状「即行」をつかうべきところで「速攻」にしている例が目立つ。まかり通っている同音異義語ミスのひとつ。 ・理由書きことばとして、実際「即行」をつかうべきケ…

【懸命/賢明】編集の現場から

●基本的な意味懸命:力のかぎり賢明:かしこく問題に対処できるようす ・現状似たような意味ではないので間違えそうもない気がするが、よく目にする。「懸命に〜する」のときはあまり問題ない。気をつけたいのは「〜するのは賢明だ」を「〜するのは懸命だ」…

【上げる/挙げる】編集の現場から

・現状「上げる」を「挙げる」にしているケースがよくある。ほとんどが手をアゲル場合。うっかりミスのひとつです。 手を上げる(一般的)手を挙げる(限定的:挙手に類する、自分の意思をあらわすとき) とおぼえておくとよい。 ・理由易しい漢字だとノーマ…