北原帽子の似たものどうし

昨日書いた文章、今日の目で読み返す。にがい発見を明日の糧に。

【即する/則する】編集の現場から

基本的な意味

・即する:ぴたりとつく、あてはまる

・則する:ある基準や決まりに従う

 

現状

「即する」と「則する」は似た意味を持つ言葉ですが、微妙に意味合いが異なります。「即する」は、「ぴったり合う」というニュアンスに近く、状況や条件に適応するという意味で、「状況に即した対応をとる」「要望に即した商品を提供する」などのように使われます。一方、「則する」は、「規則や法則に従う」という意味で、基準に基づくことを指します。「ルールに則した」「先例に則した」などのように使われます。そして、今挙げた例からわかるように「即する」「則する」は、「即した」「則した」という表現で使われることが多いです。

 

理由

実際のゲラでは「即した」を「則した」に直すときがよくあります。これは注意したいのは「即した」の場合だということです。つまり「則した」がふさわしいところで「則した」を選べていないことを意味します。なので「即した」が出てきたら、文脈的に「則した」でなくてよいか、自分に問いかけてみてください。

 

対処

どちらの言葉も、文脈によって使い分けが可能です。例えば、「~にソクした社会生活を送る」という場合、「即した」と「則した」のどちらがふさわしいかは、前に置かれている文言によって異なります。例えば「現行の法律に」であれば、「則した」を使い、「自認する性別に」であれば「即した」を使います。

 

現行の法律に則した社会生活を送る

自認する性別に即した社会生活を送る

 

「即する」と「則する」は、ミスしがちな同音異義語の代表ではありませんが、気づきにくいペアのひとつです。しかし、使い方を間違うと誤解を招くおそれがある同音異義語、というわけでもありません。なので、使うときに恐れることはありません。うっかり間違わないように、それぞれの意味や出方のパターンを理解しておきましょう。