基本的な意味
逸らす:別の方向へ向ける
反らす:弓なりに曲げる
現状
「逸れる」は、目的語をともなう「逸らす」のときにうっかりミスが起こりやすい。そして、それは身体の部位に関連する表現のときだ。また、「逸らす」がふさわしい入力の場面、変換候補で最初に「反らす」が出てもスルーしまうことがある。下記に列挙した中で「反らす」がふさわしいのは「背中を反らす」「体を反らす」、他は逸らすを使う。
視線を反らす(×)→視線を逸らす
目を反らす(×)→目を逸らす
顔を反らす(×)→顔を逸らす
背中を反らす(○)
体を反らす(○)
理由
一瞬なんだかみんな良さそうに感じるのは、「反らす」が身体の部位と親しい意味をもつからだろう。
対処
今回の同音異義語は、編集の実務作業での傾向でいえば、「反らす」を「逸らす」に指摘する機会が多い。逆の「逸らす」→「反らす」はあまり見ない。無理やり比べてみると、暮らしのなかで、何かを弓なりにする機会よりも、何かを別の方向へ向ける機会のほうが多いだろう。なので、「そらす」は「逸らす」をまず思い浮かべてほしい。
ここまで見てきて分かるように、「逸らす」と「反らす」では、間違った連想をさそう語として「反らす」が存在している。こちらが脇役。そして間違う傾向がある主役が「逸らす」のほうだと理解しておくとよい。実際に書いているとき、変換候補からの選択で選ばされていることを自覚できると、うっかり間違う場面は減るだろう。なお、気づいて直すときにどちらの漢字が適切か迷う場面は少ないので、ひらがなにする必要はない。
ちなみに今回のようなうっかりミスは、話が逸れて、ではあまり起こらない。話が反れて、だと身体の部位に関連しない表現なので違和感に気づけることが多いからだ。