日本語には、読み方が同じで使う漢字が異なる言葉が多くあります。「離す」と「放す」もその一例です。使い方の線引きが曖昧である異字同訓なのですが、場面によっては使い分けが求められます。それぞれの基本的な意味を比較しながら、どのような使い方がふさわしいかを見ていきましょう。
基本的な意味の比較
離す:くっついている状態を分ける(separate)
放す:対象を自由にする(release)
「離す」は、「くっついている状態を分ける」という意味を持っています。たとえば、「私の手を離さないでね」といえば、「つないでいる手をほどかずに、そのままにしておいて」という意味になります。つまり「離す」は、何かをつなぎ止めている状態を解いて、遠ざけることに重点がある言葉なのです。
一方「放す」は、「対象を自由にする」ことを意味します。「お願いだから、放して!」というフレーズは、誰かに手首などを強くつかまれていて、それを自由にしてほしいと頼む場面で使われます。「放す」は、単に距離をとるのではなく、「束縛を解く」ことに重点がある言葉です。たとえば「鳥を放す」といえば、鳥かごなどから野生に解放するというニュアンスになります。
言葉の使われ方の現状
「離す」は距離をとる動作全般に幅広く使われるのに対し、「放す」は特定の文脈で使われることが多い印象です。しかし抽象的な意味合いを含む「手放す」や、「手綱を放す」のように人が何かを強くつかんでいる状況を解除する場合は「放す」が自然です。また、このようなケースでも最近では「手離す」「手綱を離す」と書く人も少なくなく、両者は混同されることがあります。編集実務の仕事上でも「離す」を「放す」に指摘する場合が多いです。どちらかというと「放す」のほうが馴染みの薄い言葉なのかもしれません。
間違いやすい理由
「離す」と「放す」が混同される理由の一つは、どちらも「つながっているものを解く」場面で使われるからです。たとえば「手を離す」と「手を放す」は、どちらも対象と手がつながる状態をやめることを表せるため、誤用に気づきにくいのです。しかし、厳密には「手を離す」には「距離をとる」というニュアンスがあり、「手を放す」には「つかんでいたものを自由にする」という意味が強くなります。
間違いを減らすための対処方法
おさらいします。
「離す」と「放す」を正しく使うためには、それぞれの言葉が持つイメージを意識するとよいでしょう。繰り返しになりますが、「離す」は「くっついている状態を分ける」、「放す」は「対象を自由にする」と覚えておくと、迷いにくくなります。
たとえば、子どもと手をつないでいるときは「手を離さないでね」、誰かに腕をつかまれているときは「お願いだから、放して!」が、ふさわしい使い方です。また、動物などを自然に戻すときは「放す」が適切です。
「手を放さないでね」×
→「手を離さないでね」○(セパレートしない、の意味合いが強い)
「お願いだから、離して!」×
→「お願いだから、放して!」○(リリースする、の意味合いが強い)
日常会話の中で使いながら、少しずつ言葉の違いを意識していけば、より正確な日本語の表現が身につくでしょう。