北原帽子です。
わたしは発売をひかえた新刊本のゲラと日々向き合っています。おもに文章の品質を高める作業をしています。書かれたものは、大人へと成長する過程でどのような変化をしていくのか。そのプロセス自体がもつ価値を伝えていけたらと思っています。
今回から三回に分けて、「私たちが文章にしていくこと」と題して、手直しについてのかんたんなコラムを書いていきます。
各回の内容は、以下のようなものです。
第一便
「行為」読み(今回はこちら)
第二便
第三便
今回は、第一便「行為」読みです。
〇書きっぱなしはどこに?
先日、自分が送ったメールを読み返す機会がありました。友人との約束の時間を確認したのですが、その文面に誤記を見つけました。送る前にいつも確認しているつもりなんだけどなあと思いながら、念のため、他の送信ずみメールも見てみると、変換ミスがもう一つありました。
確かに友人とのメールで書きミスがあっても大した問題はないのかもしれない。親しい仲間内のやりとりだし。わたしが驚いたのは、確認していたつもりが確認になっていなかったということ。
しかしこれは当然のことだな、とも思いました。わたしがしていたのは「行為」読みで、「状態」読みではなかったから。ケータイという身近なものでこれを知れたのは、仕事がら収穫でした。
「行為」読みと「状態」読みというのが、わかりにくいかもしれません。ここで少し説明しておきますね。文章を書くときの「読む」行為についてです。
書きながら読むこと=「行為」読み
書いたものを読み返すこと=「状態」読み
ということ。
これはわたしが勝手につくった造語。読むことを時間軸で区別してみたのです。なぜ区別するのか。それは区別することで書くときのプロセスがクリアになるからです。
あなたも「行為」読みの情熱と「状態」読みでの冷静さとのギャップを、送信ずみメールで体感してみてください。時間がたった文章は自分が書いたものでも、けっこう新鮮に感じるものです。確認してみて間違いが見つかった人は、少し注意がいるかもしれませんね。書いているときは誰もがなかなか謙虚になれない。だけど意識するだけで変わるものです。たかがメールといえども、できれば変換ミスは少ないほうがよいですからね。
ならば、誤記が残らないようにするにはどうすればよいのか。必要なのはちょっとした工夫です。「状態」読みにうまく移るためのコツのようなもの。
ざっくりいうと、それは文章を一度「寝かす」ことです。
つまり、時間をおく。メールでしたら書いたら「一時保存」をしてみる。一時保存なんかいちいちしてられないよというのなら、文面から目をはずしてみる。それだけでも有効です。頭が一度リセットされる方向にむかい、目をもどすと誤記に気づけたりするのです。これはフォーマルなライティングにも生かせるはず。ぜひ試してみてください。
というわけで今回は、ケータイメールの「送信」ホルダーは書きっぱなし文章の宝庫、というお話でした。
最後まで読んでくれてありがとうございます。次回は、寝かしからの「状態」読みで、文章にしていくことを考えていきます。お楽しみに。
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