北原帽子の似たものどうし

昨日書いた文章、今日の目で読み返す。にがい発見を明日の糧に。

【必須/必至】編集の現場から

基本的な意味 必須:なくてはならないこと 必至:必ずそうなること、避けられそうにないこと 現状 必至の意味がふさわしい文脈なのに、必須にする人が少なくない。ベテランの著者はあまり間違わない印象がある。 理由 わたしたちが、なぜ必至をつかうべきと…

【決済/決裁】編集の現場から

基本的な意味 決済:お金を支払う 決裁:下の者が出した案の可否を上の者が決める ・現状と理由 同音異義語による変換ミスの典型ペアです。編集の現場感覚では、「決裁」をつかう場面で「決済」にひっぱられるものが多い印象です。「決裁」のほうが世間的に…

だれが自分の文章を読むのか?

顔つきというものは変えられないが、身だしなみは整えられる。 たとえば、家をでる前の身じたくから人に会うまでの時間をすこし思いかえしてみる。会った人に、襟の折れやボタンのかけ忘れ、チャックの閉め忘れなどを指摘されたことがあっただろうかと。最近…

【押さえる/抑える】編集の現場から

基本的な意味 押さえる:動かないようにする 抑える:くいとめる ・現状と理由 この異字同訓は意味の重なる範囲が広いため、使い分けがむずかしい。ゲラでは「押さえる」にすべきところが「抑える」になっているケースが目立つ。また、反対の意味になる場合…

文章と教育

小中高と作文の授業を受けたことがあっただろうか。思い出せる限り、ない。たしかに感想文を書く機会はあった。多くあった。名著や課題の本などを読み、書く内容は自由だったと思う。だけど小学生のころといえば、なにか「よいこと」を書かなければならない…

【対価/代価】編集の現場から

このふたつは同音異義語ではありません。 代価(だいか)と対価(たいか)。 「代価」の意味で、「対価」を使っているひとが多い印象がある。 たとえば「だれがその対価を払うのか」は、「だれがその代価を払うのか」である場合が多い。 ・だれがその代価(…

推敲の前に、なにをするのが効果的なのか?

わたしたちは、常に現在の自分が過去の自分を上書きして暮らしています。それは無意識におこなわれていて、おそらく今の自分を肯定していく土台になっている。「頭を冷やしてよく考えなさい」といわれることを繰り返しながら、人は成長するものなんだろう。 …

文章を書いているとき、人はどんな心理にとらわれやすいのか?

まとまった文章を一本仕上げるのは、誰だっていつだって至難の業。いざ書き出してみると、わたしたちの頭はマルチタスク状態になるからです。発想、表現、構成、品質など、やることは考え出したらキリがない。書きあぐねるときもあるでしょう。わたしもいち…

書いた文章を読み返すと、どんなことが起こるのか?

仕事柄、日々著者の推敲の過程を目の当たりにしていると、気づかされることがたくさんある。今回は、文章をつくるときは「できるだけ早めに取りかかろうよ」ということについて話してみたい。 時間がかかること、時間をかけること まとまった文章が出来上が…

【解答/回答】編集の現場から

前回の使い分け【答える/応える/堪える】で「答える」にふれたので、あわせて考えてみたいのが【解答/回答】の使い分けです。 ・テスト用紙の「かいとう」欄がせまい理由 ・一発「かいとう」 ・アンケート用紙の「かいとう」欄が広すぎる 解答/回答 この…

【答える/応える/堪える】編集の現場から

あなたは「こたえる」という音を聞いたとき、どんな漢字を思い浮かべますか。 答える 応える 堪える さらっと三つともでてくる人は少ないんじゃないかと思います。きちんと使い分けている著者の方も少ない印象があります。それは、どれを使っても間違いでは…

【づく/ずく】編集の現場から

ゲラを読んでいると、前回の【づくし/ずくめ】と同様に【づく/ずく】でも「づ」と「ず」で表記が混乱しているのを見かける。漢字で「付く」なら「づく」、「尽く」なら「ずく」になる。なかでも「入院している人を力づける」のように励ますという意味の「…

【づくし/ずくめ】編集の現場から

【づくし/ずくめ】の使い分けのまえに、「ずくし」「づくめ」という書き方はないことを、まず知っておくこと。「づくし」「ずくめ」が正しく、辞書ではこの表記で載っている。 それでは本題の使い分け。わたしは今でも迷うときがある。うろ覚えでやると間違…

【薦める/勧める】編集の現場から

「すすめる」は、「薦める」と「勧める」で迷うときがある。「薦める」のほうがなじみがあるかもしれない。オススメ商品の意味で、よく見かける。もう一方の「勧める」はどうだろう。ときどき見かけるかんじかな。普段から「勧める」を使えるひとは言葉に意…

【悲壮/悲愴】編集の現場から

「ひそう」は、つながる言葉が例えば「あふれる」のか「ただよう」のかで、あてる漢字が変わってくる。あふれるなら「悲壮」、ただようだと「悲愴」になる。 悲壮感あふれる表情(勇ましいの意味) 悲愴感ただよう表情(痛ましいの意味) のようになる。ゲラ…

【渡る/亘る】編集の現場から

〜は長期に渡る 〜は広範囲に渡る 〜は多岐に渡る 公私に渡り〜 細部に渡り〜 上のような使い方は、テレビの画面などではよく見かける。しかし使い分けるのなら、これらはすべて正確には「亘る」のほう。「亘る」をつかうところで「渡る」になっているのが常…

【伺う/窺う】編集の現場から

・伺う 聞く、尋ねる、訪ねるの謙譲語 ・窺う 様子をみたり、機会をねらったりすること ゲラでの指摘では「伺う」を「窺う」に直すときが多い印象。たとえば「顔色を伺う」としているのをよく見かける。おそらく一般的に「窺う」の存在感がうすいんだろう。…

【半面/反面】編集の現場から

よくあるのが、「半面」をつかったほうがよいところで「反面」にしている例。とくに接続詞的につかう場面では気を配りたい。著者の方でも、きちんと使い分けているときが少ない印象がある。そんな似たものどうし。 ・「片方で」「一方で」の意味でつかう場合…

【お話をする/お話しする】編集の現場から

意外と知られていない、送りがなの有無について。取り上げるのは「おはなし+する」の使い方。どういう場合におはなしの「し」をおくるのか、おくらないのか。表現のしかたは決まっていて、多くの著者も下記のように使っている。参考に。 ・【お話】が名詞の…

【震える/振るえる】編集の現場から

変換ミスの典型。誤りで多いのが、「震える」の意味で「振るえる」としてしまうケース。「振るえる」という文字列が、小刻みに動くこととの親和性を感じさせるのかもしれない。「ふるえる」と打つと推測変換で「震える」が第一候補で必ずくるようにできない…

【読了】ナタリーの人が書いたライティング本

日頃、好きなアーティストのインタビュー記事などを読ませてもらっているナタリー。今年(2015年)の8月に刊行された唐木元 『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング』(発行・インプレス)を読了。おもしろかったので思ったこ…

「詫び訂」のあるサイトはなぜ信用できるのか?

あなたはネットでサイトの善し悪しをはかるとき、なにを拠りどころにしていますか。私はサイトの信用性をみるとき、「詫び訂」があるかどうかを判断のひとつにおいています。これからその理由を説明していこうと思います。 〇「詫び訂」とはなにか? まず「…

【うまれる/うむ】編集の現場から

この2つは使い分けが難しい。というか、明確に区別するとうまくいかない場合がある。それでも指針は必要だろうから、示しておきたい。基本、【うまれる/うむ】は、その表現が自動詞なのか他動詞なのかで使い分けるとよい。「〜が生まれる」「〜を産む」と…

【不信/不審】編集の現場から

似たものどうしのなかには、後ろに付く動詞でどちらか決まってくるものがある。【不信/不審】は、その典型。「買う」とあれば前には「不審」、「招く」が後ろにあれば「不信」のほうでなくてはいけない。「不審を買う」「不信を招く」となる。つまり、あや…

【例えば/喩え・譬え/仮令】編集の現場から

この3つのちがいは区別しておきたい。どういうときに、どの漢字をつかうべきか。まず「〜にたとえると」というとき、漢字は「喩え」か「譬え」をつかう。これを「〜に例えると」としているケースが多い。また仮定を強調するさいの「たとえ〜でも」というと…

【身に着ける/身に付ける】編集の現場から

この2つ、使い分けている著者は多い。衣服・アクセサリー類は「身に着ける」で、学問・知識などは「身に付ける」としている。ちなみに、衣服は「着ける」、アクセサリー類は「付ける」で分けているひとはあまりいない。学問・知識を「付ける」にすれば、ア…

私たちが文章にしていくこと 第三便

北原帽子です。 三回に分けて、「私たちが文章にしていくこと」と題して、手直しについてのコラムを書いています。 各回の内容は、以下のようなものです。 第一便 「行為」読み 第二便 「状態」読み 第三便 デジタル環境 今回は、第三便。デジタル環境という…

私たちが文章にしていくこと 第二便

北原帽子です。 前回から三回に分けて、「私たちが文章にしていくこと」と題して、手直しについてのコラムを書いています。 各回の内容は、以下のようなものです。 第一便 「行為」読み 第二便 「状態」読み 第三便 デジタル環境 今回は、文章がかたちをなす…

私たちが文章にしていくこと 第一便

北原帽子です。 わたしは発売をひかえた新刊本のゲラと日々向き合っています。おもに文章の品質を高める作業をしています。書かれたものは、大人へと成長する過程でどのような変化をしていくのか。そのプロセス自体がもつ価値を伝えていけたらと思っています…

新刊発売『文章の手直しメソッド 〜自分にいつ何をさせるのか〜』

北原帽子です。 本日、わたしの電子書籍がアマゾンから販売開始されました。 本にするために昨年から書いていた文章が、かたちになりました。 タイトルは『文章の手直しメソッド 〜自分にいつ何をさせるのか〜』。 ある意味で今回の執筆は、本の内容をそのま…